成長機会を求める若者と、受け入れる職場のギャップ
2026年9月1日新卒で入った会社に定年までいたいと考える人は、いまや少数派です。数年で力をつけて次へ進むことを前提に働き始める人が増えています。実際、若手の離職理由の半数以上が「成長できないと感じたから」というもので、副業を始める20代もこの1年で急増しています。ただしそれは収入のためだけでなく、自分の力が外でも通じるか試したいという動機によるものだそうです。
その一方で、教える側の職場では今もOJTが中心です。指導役は自分が育った時代のやり方しか手本を持たないまま、部下と向き合っています。同じ「成長」という言葉を、送り出す側と受け入れる側は、今どれだけ同じ意味で使えているのでしょうか。 検証や意味づけの機会は、目立つ仕事に就いている人だけでなく、それに立ち会う時間さえ持てない人にも、どう届けられるのか。この問いに、今日この場で答えが出たわけではありません。皆さんお一人おひとりが、持ち帰って考えていただければと思います。
この討論は、実在の人物ではなく、AIが生成したペルソナによるものです。多様な立場をなるべく忠実に再現できるようリサーチに基づいて設計していますが、現実の意見や多様性を完全に反映するものではありません。
「成長」を求めて動く若者たち―その本音とは
司会
まず力をつけてから次の環境に移るという発想は、一つの場所に長く腰を据えて信頼を積み上げていく昔ながらの働き方とは、根本的に何が違って見えますか。金子さん、ご自身の実感としてどうですか。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
会社に対する信頼を積み上げていくより、自分自身にスキルという資産を積み上げていく感覚の方が強いです。会社は正直いつどうなるか分からないので、それなら自分に残るものを増やす方が確実じゃないかと。ただ短期で環境を変えるからといって信頼構築を放棄しているわけでもなくて、プロジェクト単位でもチームにちゃんと信頼してもらえないと成果は出せません。信頼の積み方が長期か短期サイクルかの違いなだけで、必要性自体は変わらない気がしています。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
金子さんみたいにプロジェクト単位でも信頼を積む意識がある人は強いと思うんですけど、卒業生の相談を聞いていると、その短期サイクルの途中で孤立感を感じて心が折れてしまう子が結構多いんです。スキルが資産として残るのは分かりますが、サイクルを一周する前に潰れてしまったら、積み上げる前に終わってしまう。信頼は短期でも作れるものなのか、それとも最初のうちだけは長めに面倒を見てもらう時間が必要なのか、そこが気になります。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
それはすごく分かります。実際、面談で見ていても最初の3ヶ月で放置された子と、入社時にオンボーディング担当がついて週1でフィードバックをもらえた子とでは、同じ短期サイクル志向でも定着度が全然違うんですよね。短期で辞める前提だからこそ、最初の関わりの密度が逆に重要になる。企業側が「どうせ数年でいなくなる」と割り切って手を抜くと、本当にすぐ辞めていくという悪循環になっている気がします。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
オンボーディング担当がつくかどうかで差が出るという話、それは企業の規模差ともかなり関わってくると思います。厚労省の調査だと、従業員300人未満の中小企業では人材育成に「時間的余裕がない」と答えた割合が大企業より明らかに高いんです。日本の雇用の7割は中小企業が占めていて、そもそも専任のOJT担当を置く人員配置自体が難しいところが多い。手を抜いているというより、割ける人手がないという体力差が背景にあるケースが結構あるんですよね。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
体力差の話はその通りだと思うんですけど、面談していると必ずしも規模と定着率が一致しないんですよね。従業員数千人の大企業でも育成担当が名ばかりで放置されている子もいれば、社員10人くらいの会社で社長が毎週1on1をやっていて定着率が高いところもある。結局、人数の余裕以上に「育成を仕組みとして意図的に設計しているか」の差の方が大きい気がしていて、規模のせいにしすぎるとやっていない企業の免罪符になってしまう懸念もあります。
土谷 隆 育成体力に乏しい中小企業の経営者
社長が毎週1on1と言うけど、社員10人の会社と現場も回している25人の町工場じゃ違うんですよ。俺だって毎週やりたい。でも朝から現場に入って、見積もり書いて、取引先回って、気づいたら夜だ。時間って湧いて出てこない。仕組みとしてやる気がないんじゃなくて、削る場所がもう無いんです。
司会
岩立さん、金子さんのように会社より自分のスキルに資産を積む感覚で数年ごとに移っていく生き方は、岩立さんが一つの会社で信頼を積み上げてきたキャリア観から見ると何が一番違って見えますか。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
金子さんの言う「スキルという資産」というのは分かるんです。ただ私が34年やってきた感覚だと、本当に価値のある技術は、資産として取り出して他所で使える形になるまでにけっこう時間がかかります。例えば製造現場で、音や振動のわずかな違いで不具合を察知する感覚や、設計図の裏にある意図を読み取る力。これは3年やそこらじゃ棚に並べられる「資産」にはならない。ずっと同じ現場で失敗を重ねて、ようやく体に染み込む類のものなんです。だから短期で積み上げるスキルと我々の技術は、そもそも積み上がる時間軸が違うんじゃないかなと感じます。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
時間軸が違うというのはすごくしっくりきます。私たちが磨いているのは、たぶん暗黙知みたいな深さじゃなくて、どんな業界にも横展開できる汎用的な思考の型なんですよね。だから種類が違うだけで、どちらが偉いということではない気がします。ただ言われて不安になったのは、短期間で浅く広く積んでいるだけで、実は何年経っても「体に染み込む」レベルには一生辿り着けないんじゃないかということです。3年でコンサルを辞めて事業会社に行った先輩たちが、現場の泥臭い意思決定の中で意外と自分のスキルが薄っぺらく感じたと言っていたのも思い出します。あと富松さんが言っていた孤立感の話、私自身は運よく最初の半年で徹底的にフィードバックをもらえたからやってこられた感覚があって、あれがなかったら多分続いていなかったです。
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
半年で徹底的にフィードバックをもらえたというのを聞いて羨ましいなと思いました。外資系コンサルは、最初から育成の仕組み自体が濃密に組まれていますよね。専任のトレーナーがいたり、評価サイクルが短くて頻繁にフィードバックする文化がある。うちみたいなSIerだと、私がプレイングマネージャーで自分の案件を抱えながらOJTもやるので、その密度をそもそも再現できないんです。やる気の差じゃなくて、体制の作り方が違いすぎる気がします。
小野 翔太 副業・スキルシェアマッチングサービスの事業責任者
体制の差の話、うちみたいなプラットフォーム側からすると、社内でその濃密さを再現できないなら外で試すという選択肢があってもいいと思うんですよね。中小SIerで手厚いOJTが組めなくても、個人が副業などで自分のスキルが通用するか検証する場は今は取りに行ける。ただこれは岩立さんが言っていた体に染み込む技術の話とは別物で、あくまで型化できるポータブルなスキルの話です。会社の体制不足を個人の外部経験で埋め合わせるような動きは、実際うちのサービスでも増えています。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
外で経験を積む選択肢、正直否定できないんですよね。うちも店長がプレイングマネージャーで手一杯で、田辺さんが言っていた濃密な体制なんて再現できない現場が大半です。ただ会社側からすると、在籍中にちゃんとスキルが事業に還元される状態を作れるかが勝負で、外に出て戻ってくることだけが投資回収じゃない。むしろ社内にいながら複数のキャリアの見え方を示せないと、結局は離職か制度が形だけになるかのどちらかで終わる気がしています。
近藤 雅之 企業の経営層(人事担当役員)
曽我さんの見立て、経営の立場からすごくうなずけます。うちも社内公募的な仕組みを検討しているんですが、実際やろうとすると現場の課長から人手が減るという声が出て、進めるのが簡単じゃない。それでも社内でキャリアの選択肢を見せられないと、外に出た人材が戻る動機も薄くなるし、技術継承の担い手が育たなくなる不安は正直あります。石井さんが言っていた大企業でも育成が名ばかりという話も刺さって、規模より本気度の差なんだと痛感しています。
司会
真家さん、メーカーの総務職として働く中で、金子さんのようにまず外資系コンサルやスタートアップで力をつけてから次に進むという考え方と、一つの会社に長く勤めて信頼を積み上げていく昔ながらの感覚、ご自身はどちらに魅力を感じますか。
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
正直、金子さんの外資コンサルの話は自分の世界とは違いすぎて、実感として比べられないところがあります。ただ岩立さんが言っていた、現場の感覚や設計の意図を読み取る力は時間をかけないと染み込まないという話は、自分の3年で見切りをつけかけていた性急さを振り返るきっかけになりました。とはいえ総務の仕事だと、その「染み込んでる感じ」すらまだ全然実感できなくて、そこがもどかしいです。備品発注や電話応対は3年やっても10年やっても中身自体はあんまり変わらない気がしていて、岩立さんの現場みたいに深まっていく実感がある仕事なのか、自分にはまだ分かりません。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
いや、備品発注や電話応対だって絶対に深まっていると思いますよ。同じ取引先でも担当者の機嫌や納期の癖、電話の声色で今日は忙しいなとか分かるようになっているはずです。ただそれを「これがお前の勘だぞ」と言葉にして見せてくれる先輩がいないだけじゃないですか。うちも設計の勘を後輩に教えるとき、言語化しないと本人は気づかないまま埋もれさせてしまう。金子さんの言う汎用的な型と染み込む勘の違いも、結局伝え方次第で見え方が変わる気がしますね。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
それを聞いてはっとしました。染み込む勘があっても言葉にして渡してくれる人がいなければ本人は気づけないまま埋もれてしまうというのは、総務みたいな地味な仕事にもそのまま当てはまる気がします。相談に来る子でも、フィードバックが薄い環境にいた子ほど、自分に何が積み上がっているのか分からないまま不安だけ膨らんでいく感じがして。汎用的なスキルか暗黙知かという種類の違いより、そもそも手渡してくれる人がいるかどうかの方が、その子の安心感には効いているんじゃないかなと思います。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
手渡してくれる人がいるかどうかの方が効くという話を聞いて、助成金の設計を見直さなければと思いました。うちの支援策は正直、研修費の補助とか人を増やすお金の話に偏っているんです。でも岩立さんの話みたいに、勘を言葉にして渡す技術そのものは中小企業にはノウハウが無いことが多い。ユースエール認定でも、フィードバックの仕方まで踏み込んだ支援メニューは弱いなと痛感しました。
司会
石井さん、金子さんのように外資系コンサルでまず力をつけてから次に進むという動き方は、転職エージェントとして数多くのキャリアを見てきた中で、一つの会社に長く勤めて信頼を積む昔の感覚と比べて、若手にとって何が一番違う魅力や不安として見えていますか。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
外資コンサルみたいに濃密なフィードバック体制があっても、数年後に薄っぺらく感じたという声は実は結構聞くんです。体制が整っているだけじゃ解決しないんだなと面談していて思う瞬間があって。結局、自分の力が社外でも通じるか試せた経験があるかどうかが、成長実感の分かれ目になっている気がします。曽我さんが言っていた投資回収の話も、外に出て検証させることを込みで考えた方が、むしろ在籍中の納得感にもつながるんじゃないかと思うんですよね。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
外に出て検証するのが分かれ目というのは分かるんですけど、それを社内で作れないかと最近考えているんですよね。例えば新しい業態の立ち上げとか、部署を横断する短期プロジェクトに手を挙げさせて、そこで通用するか試させる。異動じゃなくても、期間限定で違う仕事にぶつける場は作れるはずです。近藤さんが言っていた社内公募も、現場の人手が減る抵抗はあるけれど、外に出さずに検証機会だけ用意できれば、投資回収は在籍中の還元プラス検証の場の提供と捉え直せる気がしています。
表 杏花 育児と両立しながら働く若手社員
期間限定プロジェクトに手を挙げさせるという発想はすごくいいなと思う反面、その声かけ自体が私みたいな時短勤務には来ないんじゃないかという不安があります。人手が減る抵抗の話があったけど、そもそも時短の人は候補にすら入らない、最初から数に入れてもらえていない感覚があって。声をかけてもらえるだけで、挑戦できなくても意欲は伝わると思うんですけどね。
司会
金子さん、外資系コンサルでまず力をつけてから次に進むという動き方を選んだこと自体、岩立さんのように一つの会社で信頼を積み上げていく生き方と比べて、ご自身の中でどちらが安心できるキャリアだと感じますか。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
岩立さんが言っていた、取引先の担当者の機嫌や納期の癖が分かるようになるという話、それも一種の資産だよなと思って聞いていました。ただ聞きたいのは、その積み上げが安心材料になっているのかということです。34年やってこられて、今の終身雇用が崩れていく空気を肌で感じたりしますか。それとも、そこはあまり不安に思ったことはないですか。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
不安、ありますよ。役職定年まであと数年で、管理職から外れて現場も離れることになる。会社にしがみついてきた分、定年後にどこも雇ってくれないんじゃないかって、同僚との酒の席では毎回その話になります。だからこそ聞きたいんですけど、金子さんみたいに数年ごとに移っていく生き方は、実際やっていて本当に安心なんですか。次も通用するという保証、自分の中でどう作っているのか気になります。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
長く勤めてきても結局「次も通用する保証がない」と正直に言ってもらえたのが、すごく響きました。34年やっても保証が見えないなら、3年で移る私が保証を持っていないのも、実は同じ地盤の弱さなんじゃないかという気がしてきて。長期でも短期でも保証がないなら、結局どちらを選ぶかは自己防衛としての合理性の問題でしかないんですかね。さっき猪股さんが助成金の設計を見直さなきゃと言っていたのも、結局そこの不安を制度側がどう支えるかの話な気がして、岩立さんはその不安、会社や制度に埋めてほしいと思いますか、それとも自分でどうにかするものだと思っていますか。
小野 翔太 副業・スキルシェアマッチングサービスの事業責任者
保証を個人の自己責任だけに寄せる話にするのは、ちょっと違うかなと思って聞いていました。外で積んだ経験自体はスキルとして市場でちゃんと評価されるものですが、それを本人が「自分にはこういう力がついた」と言葉にできるかどうかで、その後の転職や社内評価の伸び方に差が出るケースはよく見ます。だから保証は、経験を見える化するのを手伝う仕組みがあるかどうかでも変わってくる気がするんですよね。石井さんが言っていた濃密な体制があっても薄っぺらく感じるという話も、体制はあっても本人が経験を意味づけできていなかったんじゃないかなと思ったりします。
土谷 隆 育成体力に乏しい中小企業の経営者
経験を意味づけできていなかったというのは、うちの現場にも刺さるんですよ。石井さんが言っていた濃密な体制でも数年で薄っぺらく感じるという話も、体制以前に本人が気づけていないだけなんじゃないかと聞いて。うちの職人だって技術は持っているのに、それを言葉にして「お前これができるようになったんだぞ」と渡す工程が抜けていた。技術がないんじゃなくて、渡し方が無かったんだなと思います。
司会
田辺さん、外資系コンサルやスタートアップにまず飛び込んで力をつけてから次に進むという動き方と、田辺さんのように一つの会社でOJTを担いながら長く勤め上げていく感覚とでは、若手に見せられる「成長の実感」の質そのものがどう違って見えますか。
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
外資とうちの差は、体制の濃密さだけじゃないのかもと最近思い直しているんです。石井さんの、体制があっても数年で薄っぺらく感じるという話を聞いて。うちは時間がないなりに、案件が終わったとき「このコード設計、前より読みやすくなったね」と一言だけでも渡すようにしていて、それだけで若手の顔つきが変わることがあるんですよ。濃密さより、できるようになったことを本人より先に見つけて言葉にする、その一回があるかどうかかもしれません。あと表さんの声かけの話、うちも1on1の対象って結局手が空いている人優先になりがちで、時短の子に均等に機会を渡せているか、正直自信ないです。
近藤 雅之 企業の経営層(人事担当役員)
1on1が手が空いている人優先になるという話、正直うちも同じです。制度としては全員対象という建付けなんですが、実際の運用は現場の裁量に委ねていて、結局声がかかりやすい人に機会が偏る構造になっている。表さんが言っていた時短勤務が最初から数に入っていない感覚も、多分善意でも起きる話で、悪気なく機会設計自体が特定の働き方を前提にしているんだと思います。ここは仕組み側で対象者を可視化しないと、現場の善意任せでは絶対直らないですね。
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
田辺さんの、案件が終わったとき一言渡すという話はいいなと思って聞いていました。うちの上司からそういう一言、ほぼもらったことがないので。備品発注でも多分「この業者との交渉うまくなったね」と言われたら全然見え方が変わる気がします。ただ気になったのは、その一言をもらえる人って結局目立つ仕事をしている人からなんじゃないかということで。総務みたいな地味な仕事をしている自分は、そもそも見つけてもらう順番が後回しになっていそうで、そこはちょっと不安が残りますね。
司会
石井さん、フィードバックの偏りという話が出ましたが、そもそも外資系コンサルやスタートアップにまず飛び込む生き方は、一つの会社で信頼を積み上げていく昔の生き方と比べて、成長を実感するタイミングの早さや頻度そのものが違うのでしょうか。転職エージェントとして数字や事例で見えている違いを教えてください。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
数字や事例で見ると、外資は良くも悪くも検証のタイミングが早いんですよね。案件ごとに成果が数値や評価で可視化されるから、半年後には「通用した/しなかった」が本人にもはっきり見えてしまう。一方で伝統的な会社だと、その検証の場自体が3年後、5年後にしか来ない設計になっていることが多くて、それが焦りにつながっている気がします。ただ真家さんが言っていた「目立つ仕事の人から声がかかる」という不安、実は外資でも同じ構造があって、目立つ案件に配置されるかどうかで検証タイミングの早さすら格差が出ているんです。だから外か中かより、誰にその検証機会が回ってくるかの方が根深い問題なんじゃないかと思います。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
外か中かより誰に検証機会が回るかという話、うちの相談でもまさにそれです。同じ配属先でも、目立つプロジェクトに入れた子は自信をつけて帰ってくるのに、地味な部署に配属された子は3年経っても「自分に何が身についたか分からない」と言いに来る。会社選びより配属ガチャの方が本人にとって大きいんじゃないかと、面談していて思うことがよくあります。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
配属ガチャの話、これは結構見落としていた角度だなと思って聞いていました。今は個人向けのキャリア相談やリスキリング支援みたいに、本人に直接届ける施策は増やしてきたんですけど、そもそも社内でどのプロジェクトに配置されるかという入口の偏りまでは、支援メニューが踏み込めていないんですよね。目立つ仕事に誰が回されるか可視化するところまで支援の設計に入れないと、機会そのものの不公平は埋まらない気がしてきました。
司会
岩立さん、金子さんのように数年ごとに外資系コンサルを移っていく生き方と、岩立さんご自身が34年かけて一つの会社で信頼を積み上げてきた生き方とでは、若手時代に感じていた「成長している」という実感の質そのものに違いがあったと思いますか。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
実感の質そのものより、節目を意図的に作ってもらえたかどうかの差だった気がします。私も若い頃、上司から評価や声をもらえたのは何年かに一度、下手すれば人事考課の紙切れだけでした。田辺さんがさっき言っていた案件終わるごとの一言、あれをこまめにもらえていたら、10年待たずに実感を掴めていたかもしれません。技術の深さより、渡し方の頻度をサボってきたのはこちらの責任なんだろうなと思います。
教える側の限界―OJTと世代間ギャップの現場
司会
先輩や上司が自分の育った時代の教え方を若手に伝えるのは自然なことのようですが、それが今の若手には『古い』『合わない』と感じられてしまうことがあります。田辺さん、現場でOJTを担当されている立場として、具体的にどんなズレを感じる場面が多いですか?
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
教え方が古いとか合わないとかより、そもそも指導が渡っていないことの方が多い気がしています。指導の中身より前に、誰に声をかけるかという入口の段階でもう偏りが出ている。忙しいと目立つ案件をやっている子から先にフィードバックしてしまって、地味にコツコツやっている子は後回しになる。世代のズレではなく、こちらの采配の問題だなと最近すごく反省しています。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
それ、うちが今まさにやろうとしている育成ガチャ解消策にもそのまま刺さる話で、正直ヒヤッとしました。育成計画シートやメンター制度を作っても、結局その場で誰に声をかけるか決めるのは現場の裁量です。忙しいと目立つ子から見てしまうのは悪意ではなく余裕のなさの表れなので、制度だけ整えても入口の偏りまでは埋まらない。むしろそこに評価か仕組みで手を打たないと同じことの繰り返しになる気がしています。
表 杏花 育児と両立しながら働く若手社員
田辺さんの、目立つ案件から声をかけてしまうという話、それすら羨ましいというか。時短だと夕方の場に居合わせないから、忙しくても目に入る候補にすら入らないんですよね。目立つかどうかの前に、そもそも見えていない。声かけの順番の問題より前に、視界に入る時間そのものが短いんだと思います。
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
視界に入る時間が短いと言われて、うちのチームの動き方そのものが引っかかりました。夕方に雑談ベースで案件の相談や進捗共有が固まりがちで、時短の子はその時間にもういない。声かけの順番をどう工夫するかという話の前に、そもそも情報が流れる時間帯の設計自体が時短の人を外している気がしてきました。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
時間帯設計の話、すごくわかる気がします。うちの業界だと逆に、夜まで残っている人ほど上司に相談しやすくて、フィードバックの密度も上がるんですよね。定時で帰る前提の人は最初から会議に呼ばれる回数自体が減る。働き方改革で残業を減らそうとしている会社ほど、実は皮肉な構造になっているんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょう?
小野 翔太 副業・スキルシェアマッチングサービスの事業責任者
それ、実は副業の場でも同じ構造が起きています。平日夜や土日に稼働できる人の方が発注者からの継続依頼やフィードバックが厚くなる傾向、うちのプラットフォームでも見えています。時短の人はそこにも乗りにくい。だから外での経験を言語化して見える形にする支援は、時間で不利な人にとって社内の機会格差を埋める代替ルートになれるんじゃないかと思っています。
司会
岩立さん、ご自身が受けてきた指導のスタイル、例えば「まず見て覚えろ」「量をこなして体で覚える」といったやり方を今の若手に伝えようとしたとき、具体的にどんな反応の違いや噛み合わなさを感じられますか?
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
噛み合わなさというより、そもそも同じ土俵に立っていなかったんじゃないかと、今聞いていて思いましたね。私の「見て覚えろ」も、結局は夜遅くまで残って先輩の手元を覗き込むのが前提の教え方でした。時短の人や定時で帰る人には、その機会自体が最初から回ってこない仕組みだった。古いか新しいかではなく、誰が現場にいられたかで技術の渡り方が決まっていたんだなと反省しています。
土谷 隆 育成体力に乏しい中小企業の経営者
うちの工場は現場が一つだから夜遅くまで残るといった差はできにくいと思っていたんだけど、今考えたらそうでもないんだよな。新しい機械や目立つ仕事を任される子と、ずっと下働きの子とで、俺やベテランが自然と声をかける相手が偏っていた気がする。規模が小さくても同じ構造があったんだと今気づいたよ。
近藤 雅之 企業の経営層(人事担当役員)
それ、規模の大小関係なく起きている話だと思うんですよ。新しい機械や目立つ仕事を誰に任せるかは現場の熱意だけの問題ではなく、誰にどの案件を割り振るかという配置の入口の部分に、そもそも偏りが生まれやすい構造がある気がします。うちみたいな規模でも同じで、忙しい管理職ほど無意識に声をかけやすい相手に偏る。だから教え方が古いか新しいかより、機会がどう配分されているかを見える形にする方が先なんじゃないかと、聞いていて思いました。
司会
金子さん、外資系コンサルという実力主義的な環境で育ってきた上司の「量をこなして体で覚える」という指導方針そのものに対して、成長意欲が高いご自身でも「やり方として古い」「自分には合わない」と感じる瞬間はありますか?具体的にどんな場面でそのズレを感じますか?
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
古いか新しいかで言うと、正直そこまで気にしたことはなくて。量をこなせと言われるのも、量をこなす前提の場に自分が最初から入れてもらえていたかどうかの方が大きい気がしています。私が半年で結構フィードバックをもらえたのも、コンサルの仕事は成果物が毎週目に見える形で出るから、上司も口出ししやすかっただけかもと最近思っていて。小野さんの副業の話も、結局稼働時間で見える人にフィードバックが厚くなるという、同じ構造ですよね。指導方針ではなく、見えやすさの配分の話な気がします。
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
見えやすさの配分の話、すごく刺さるところがあって。コンサルは成果物が毎週出るから上司も口出ししやすいという話でしたけど、総務のような備品発注や電話応対だと、そもそも週次で見せられる成果物自体がないんですよね。だからフィードバックする側も何を材料に評価すればいいか分からなくて、結局何も言われないまま終わっている気がします。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
総務のように成果物が見えない職種の相談、面談でほんとによく聞きます。何を評価されているか分からないという言葉、業種問わず出てくるんですよね。小野さんが言っていた副業の話ともつながる気がしていて、平日夜や土日に稼働できる人ほど発注者から継続依頼が来るというのは、社内評価と同じ構造がそのまま外にも延長されているだけなんじゃないかと。だとすると見えにくい仕事の人に必要なのは、時間を作らせることより、上司側が意図的に「これができるようになったね」と検証して言葉にする一手間な気がします。
司会
真家さん、岩立さんが受けてきた「まず見て覚えろ」「量をこなして体で覚える」という指導を、もしご自身が総務のお仕事で先輩から受けたとしたら、具体的にどんな点で「合わない」と感じそうですか?
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
見て覚えろと言われても、そもそも見て覚える対象が総務だとはっきりしないんですよね。電話応対や発注業務は判断の根拠が先輩の中にあるはずなんですけど、それを言葉にして見せてもらったことがなくて。だから覚えろと言われても何を見ればいいのか分からないまま3年経った感じです。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
見て覚えろと言われて何を見ればいいか分からないまま3年経ったという話、これを聞いて自分もハッとしたんですよ。俺の「見て覚えろ」も、結局は判断の根拠をこちらが言葉にする努力を怠って、若い人に丸投げしていただけだったんじゃないかと。手元の勘や経験は確かにあるけど、それを「なぜそう判断したか」まで分解して渡す一手間を俺はサボってきた気がします。土谷さんの工場の話でも似た偏りが出ていたし、業種関係なくベテラン側の言語化不足が根っこにあるんじゃないですかね。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
サボりというより、余裕がなかったんだろうなと聞いていて思いました。学生の相談を受けていても、企業説明では「丁寧に指導します」と必ず言うんです。でも卒業生に聞くと、先輩は忙しくて根拠まで説明する暇がなかったという話ばかりで。そのギャップに気づかないまま入社して、結局こんなはずじゃなかったとなる子、本当に多いんですよね。
司会
岩立さん、機会の偏りとは別に、指導の内容そのもののズレについても伺いたいです。「量をこなして体で覚える」という進め方自体を、今の若手は単に機会がないからではなく、やり方として古い、合わないと感じているのだとしたら、具体的にどんな点でしょうか?
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
量をこなすこと自体が古いわけではないと、俺は思っているんですよ。金子さんが言っていた場に入れてもらえるかどうかの話とは別に、こちらの反省としては、量をこなす途中で一度立ち止まって「お前、今何が分かった?」と聞く節目を作ってこなかったのが問題だった気がしています。ひたすら量だけ押し付けて振り返りの区切りを挟まなかったから、若い人からすると何のためにやっているか分からないまま数字だけ積まされている感覚になっていたんじゃないかと。量を否定しているんじゃなくて、そこに言葉を挟む一手間を俺たちが端折ってきたんだろうなと。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
振り返りの節目を作れたかという話、それ自体が余裕の産物な気がしていて。私の場合も、たまたま成果物のサイクルが週単位に近くて区切りが見えやすかったから、上司が立ち止まって聞いてくれる場面が生まれやすかっただけかもしれなくて、それって本人の努力より役割の巡り合わせだった可能性がありますよね。節目を作る余裕自体、結局誰にその時間を割くかという采配の話に戻る気がします。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
振り返りの節目が采配の巡り合わせだという話、聞いていて、それを個々の上司の善意任せにしたら結局同じことの繰り返しになるなと思っています。だから中小企業支援の助成金や認定制度の中に、週次の成果物が出ない職種でも月一で振り返りの場を作っているかどうかを評価項目に入れるなど、仕組み側で手当てできないか考えたいです。石井さんが言っていた総務のように評価材料がない職種こそ、時間ではなく検証の場を制度として組み込む支援が必要なんじゃないかと。
司会
田辺さん、ご自身が課長として教える立場になったとき、かつて自分が受けてきた「見て覚えろ」的な指導を今の部下にそのまま使おうとして、具体的にどんな場面で「これは今の若手には響かないな」と感じましたか?
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
うちのチームでもまさにそれで、コードレビューが流れ作業になっている自覚があります。指摘事項をコメントで返すだけで、なぜそれがダメなのか、どう考えればその実装に気づけたのかを分解して伝える一手間を削っている。若手からしたら修正点は分かっても、次に自分で判断できるようにはなっていない気がしていて。真家さんの、判断根拠が先輩の中にあるのに見せてもらえないという話、コードレビューにもそのまま当てはまるなと思いました。
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
コードレビューはコメントも差分も残るから、まだ言語化しやすい環境な気がするんですよね。それでも流れ作業になってしまうと聞くと、うちみたいに発注の判断も電話の対応も全部口頭でその場で消えていく仕事だと、そもそも見せる材料自体がないから、忙しさとは別の壁がある気がしています。忙しくて教える余裕がないのと、教える材料が最初から残らないのは、根っこの違う問題なんじゃないかなと、今の話を聞いて思いました。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
材料が最初から残らないというのは、うちで進めている育成計画シートでも正直拾いきれない領域だなと聞いていて思いました。シートは結局、記録できる仕事にしか機能しない。総務のように口頭でその場で消える判断は、後から書けと言っても書けないんですよね。だとすると仕組みで残そうとするより、上司が定期的に「さっきの対応、何を基準に判断したの?」と本人に問いを投げて、その場で言葉にさせる訓練の方が効くのかもしれない。記録じゃなくて対話で拾う設計、人事として考え直さないといけないなと感じています。
小野 翔太 副業・スキルシェアマッチングサービスの事業責任者
記録じゃなくて対話で拾うという発想、それ副業の現場でもそのまま使えそうだなと聞いていて思いました。発注者と受注者のやり取りは基本チャットで終わって、判断の理由まで残らないことが多いんですよ。だから「さっきのその見積もり、何を基準にしたんですか」と発注者が一言返すだけで、消えていくはずの判断が言葉になる。うちのプラットフォームでも、評価コメント欄をただの星評価じゃなくて、そういう問いかけを促すテンプレにできないかと、今ちょっと考えたくなりました。
表 杏花 育児と両立しながら働く若手社員
曽我さんの対話で拾う案、いいなと思ったんですけど、私みたいに9時から16時の時短だと、そもそも上司が対話しようにも接点の時間帯自体が短いんですよね。夕方の振り返りの時間にはもう帰っているので、その一言を投げてもらう機会自体が構造的に減っている気がして。仕組みを作るときに、時短の人はいつ声をかけるかまで考えてもらえたら嬉しいです。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
時間帯の話、これは自分が言っていた対話拾い型の設計を根本から見直さなきゃいけないなと思いました。夕方に振り返りの場を組んでも時短の人は既にいないということは、そもそも育成の時間軸を定時退社者や時短の人が主役になれる時間に置き直す必要があるということですよね。うちも1on1の推奨時間、暗黙的に夕方以降になっている気がしていて、朝イチや昼休憩前など、もっと前倒しの設計に変えられないか今すぐ確認したくなりました。良かれと思って作った仕組みが誰かを最初から蚊帳の外に置いている可能性、怖いなと感じます。
司会
金子さん、岩立さんが受けてきた「まず量をこなして体で覚える」という教え方そのものを、機会の配分の問題を抜きにして考えたとき、進め方や前提として「これは今の時代には合わない」と感じる部分はありますか?具体的にどんなズレでしょうか?
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
古いか新しいかで言うと、やっぱり量そのものが悪いとは思わなくて。ただ量をこなす前に、そもそも量をこなさせてもらえる場に呼ばれるかどうかの入口が結構偏っている気がしています。私がフィードバックをもらえていたのも、成果物が週次で出るコンサルの仕事だったから目に見えやすかったのが大きくて、他の職種だったら同じようにはいかなかった可能性がありますよね。だから指導の内容云々より、誰にその機会が回るかという采配の話な気がしています。
土谷 隆 育成体力に乏しい中小企業の経営者
入口が偏っているという話、うちの工場でも思い当たるんだよ。旋盤やNCを回している目立つ機械の仕事には俺も声をかけやすいけど、溶接や検品のような地味な作業の子には、気づいたら声かけの回数が少なかった。成果物が週次で見えるかどうかじゃなくて、こちらが分かりやすい仕事に目を向けがちだったということなんだろうな。教え方が古いとかじゃなくて、俺の采配の癖の問題だったのかもしれん。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
それ、性格の問題にしてしまうと結局「土谷さんは反省したからいいけど他は放置」で終わってしまう気がしていて。目立つ仕事に自然と目が向くのは人間の癖としてほぼ全員に起きることだと思うので、誰が今月声をかけていないかを名簿レベルで意図的にチェックする仕組みにしないと、また同じ人だけ抜け落ちる気がします。真家さんの言っていた記録に残らない仕事だと余計に見落とされやすいので、仕組み側で拾いにいく設計が要るんじゃないかと。
司会
田辺さん、ご自身が「見て覚えろ」的な指導を受けてきた側でもあると思うのですが、それを部下に使おうとしたとき、機会の采配とは別に、教え方の前提そのものが今の若手とズレていると感じた場面はありますか?具体的には、正解や判断基準を先に言葉で示さず経験させる進め方自体が、今の若手にはどう「合わない」と映るのでしょうか?
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
古いかどうかより、正解を先に言わないこと自体が二通りに受け取られている気がしています。うちの若手でも、あえて答えを渡さず考えさせようとしたら「突き放された」と捉える子と、逆にヒントだけ出してほしかったのに丸投げされたと感じる子がいて。自分で考える余地にするつもりが、根拠を渡す一手間をサボった言い訳になっていないか、コードレビューのたびに自問しています。
近藤 雅之 企業の経営層(人事担当役員)
突き放しかヒント不足かという受け取り方の違いは、教え方の技術の差より、その子がそれまで根拠を渡された経験の総量で決まる気がするんですよ。何度も理由を説明されてきた子は答えを渡されなくても自分で埋められるけど、蓄積がない子は同じ空白が不安にしかならない。だとすると新人の最初の半年は特に手厚く根拠を渡す設計にして、慣れてきたら余白を増やすという段階を踏む必要があるなと。あと表さんの時短の話、うちも1on1が夕方固定になっていて反省しました。接点の時間帯そのものが機会を配っている自覚が経営側に足りていなかった。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
根拠を渡された経験の総量という話、すごく腑に落ちます。学生を見ていても、インターンで先輩にちゃんと教わった子は、入社後に多少放っておかれても「今忙しいだけだろうな」と解釈できるんですよね。でも何も渡された経験がない子は、同じ状況でも「自分が見捨てられた」と受け止めてしまう。だから就活の段階で、一度でも丁寧に教わる経験をさせておくことが、実は入社後の耐性作りにもなっている気がします。
転職は解決策になるのか―仲介者から見える現実
司会
石井さんは日々、成長実感を求める若手の転職相談に乗り、スタートアップの裁量権に惹かれる姿も間近で見ていると思います。それでも転職が本人の望む解決にならないケースがあるとすれば、それは具体的にどんな場面で起きるのでしょうか?
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
スタートアップに転職して密なフィードバック環境に入っても、不安が消えない人を何人か見てます。「毎週上司と話せて、裁量もある。でもこれ、社外に出たら本当に通用するのか自分でもわからない」って言うんです。結局評価してるのはその会社の中の人なので、外の市場でどう見られるか検証されてない感覚がずっと残る。体制がどれだけ充実してても、そこだけは埋まらなくて、また転職を考え始める、というケースを正直何度も見てます。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
それを聞いて思ったんですけど、うちの中で節目を作って言語化して渡す努力をしても、それは結局社内の物差しなんですよね。石井さんの話は、社外の市場でどう見られるか検証されてないという不安。そこはうちがどれだけ丁寧にやっても届かない壁なのかもしれない。だから外に出る若手を止められない部分も、正直あるんだろうなと思いますよ。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
社内でどれだけ丁寧にフィードバックしても、外の市場で通用するか検証されない不安は原理的に埋まらないという話、なるほどと思って聞いてました。だとすると企業内の育成支援だけを政策として支援するのは限界があって、副業や出向みたいに社外で自分の力を試せる機会そのものを後押しする方が効くのかもしれません。副業の実施率も2023年から2025年で20代男性が11ポイント上がって20%を超えてるというデータもあるので、収入目的だけでなく通用するか試したいという動きは実際広がってるんじゃないかと思います。
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
副業や出向を後押しするという話、いいなとは思うんですけど、そもそもうちの部署だと声をかけてもらえる対象に入ってない気がしてて。あと石井さんの話、社外に出た人ですら不安が消えないということは、自分はまだ検証すら受けてない段階なので、悩みの種類がそもそも違うんだろうなと聞きながら思いました。試す機会に乗る以前の話というか。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
試す機会に乗る以前の話、というのが刺さりました。副業や出向を後押しする政策を考えるとき、私たちはつい制度を用意すれば手を挙げる人が来ると考えがちなんですけど、実際は声をかけてもらえる部署とそうでない部署が最初から分かれてる。総務のような部署は多分、社外に出す対象として名前が挙がりにくいんじゃないかと思います。機会を作ることと、その機会が誰に届くかは別の設計が必要だなと、今の話を聞いて思いました。
司会
石井さん、スタートアップに転職して裁量権も密なフィードバックも手にしたのに市場価値の不安が消えないという方々は、結局その後どう動くのでしょうか。転職を繰り返しても解決しないのだとしたら、その方たちが本当に求めているものは一体何だと感じますか?
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
何度も転職してる人を見てると、結局その人が欲しいのは新しい会社そのものじゃなくて、外に出て一回でも「通用した」という結果なんですよね。面接に受かった、案件で評価された、そういう一点の実感があれば案外落ち着くことも多い。逆にそれが得られないまま転職を重ねると、転職すること自体が目的化して、次も同じ不安を持ち越してしまう。だから私は最初の面談で、転職以外に今の場所で検証できる場面がないか、一緒に探すようにしてます。
小野 翔太 副業・スキルシェアマッチングサービスの事業責任者
その「一回でも通用した実感が欲しい」という話、すごくわかります。それって別に転職という大きなカードを切らなくても得られるはずなんですよね。副業は一つの案件が短くて、しかも複数同時に試せるから、一回失敗しても次の案件で拾い直せる。転職は動くコストが重いから次を試すまでの間隔が空いてしまう。むしろ何度も小さく検証したい人には副業の方が向いてる気がしてます。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
複数案件で小さく検証できるという話、確かに社内でも似たことができる気がしてて。うちも短期の社内公募プロジェクトを何度か作ってるんですけど、そこで結果を出すと担当部署の人間からも評価がもらえる。上司の評価がなくなるわけじゃないけど、社内でも一回外の目にさらされる感覚は作れるんじゃないかと。ただ回数が少ないので、副業みたいに小さく何度も試せる密度にはまだ全然追いついてないですね。
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
社内公募の話を聞いてて思ったのが、それも結局そのプロジェクトに誰が呼ばれるかという入口の偏りは残るんじゃないかなって。私、コンサルにいて成果物が毎週アウトプットになるから目立ちやすくて、勝手にフィードバックの機会も回ってきた側なんですよね。備品発注とか電話応対みたいに成果が形に残らない仕事の人は、その公募自体に声をかけてもらえるかどうかの時点でもう差がついてる気がして、副業も転職も社内公募も、結局同じ入口の壁を場所を変えて繰り返してるだけなんじゃないかって思っちゃいます。
表 杏花 育児と両立しながら働く若手社員
成果が形に残らない仕事は公募に呼ばれにくいという話、すごくわかるんですけど、私の場合はそこにもう一枚壁があって、そもそも勉強会とか研修が夕方にあるので、時短で16時に帰る時点で情報の流れる時間帯にいないんですよね。窓口業務は成果自体は見えるはずなんですけど、それを誰かに拾ってもらう場に物理的にいられないというか。入口の偏りって配属とか成果の可視性だけじゃなくて、勤務時間帯そのものが理由になることもあるんじゃないかと思いました。
司会
石井さん、成長実感がないと相談に来る若手の方々が、スタートアップの裁量権の大きさに惹かれて実際に転職しても、それでもなお満たされないケースがあるとすれば、その方たちは転職先を選ぶ段階で何を見誤っていたと思いますか?
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
見誤りというより、時短勤務から戻った後に相談に来る人が結構いて、それも似た構造だと思ってます。時短の間に会議や勉強会の輪から外れて、フルタイムに戻ってもその情報の遅れが埋まらないまま「気づいたら周りに置いていかれてた」って。転職先を選ぶ段階の話じゃなくて、そもそも今の職場で検証の機会に呼ばれる土俵に戻れてないことに、本人も気づいてないケースが多いんですよね。
土谷 隆 育成体力に乏しい中小企業の経営者
時短の話、うちには制度としては無いんですが、聞いてて思ったのは、うちの工場でも似たことが起きてるんじゃないかということ。溶接をやってる持ち場と、機械のすぐ隣にいる持ち場とで、休憩中とか朝礼で声をかけられる回数が全然違う気がしてきた。制度じゃなくても、立ち位置だけで同じ格差が生まれてたのかもしれん。
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
うちもリモートとオフィス出社が混在してるチームなんですけど、1on1やちょっとした声かけの回数って、結局オフィスに来てる子の方が多くなってる気がします。制度上はみんな平等に機会があるはずなのに、実際に目に入る頻度で無意識に声をかけてしまってるところ、正直あるかもしれません。育成の中身より前に、そもそも誰の顔が見えてるかで機会が決まってる部分、見直さないといけないなと思いました。
司会
石井さん、成長実感がないと相談に来る若手の方が、スタートアップの裁量権に惹かれて実際に転職した後も満たされないケースについて伺いたいのですが、その方たちは転職前、裁量権があれば成長実感も市場価値も自然と得られると考えていたのでしょうか。裁量権の魅力と成長実感のギャップが埋まらない理由を、面談で本人はどう振り返っていますか?
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
転職前を振り返ってもらうと、多いのが「裁量権があれば、成果は自然と目に見える形になると思ってた」という言葉なんです。でも実際は、裁量って渡されるだけで、それを自分で成果として言語化して外に見せる作業は本人がやらなきゃいけない。渡されっぱなしで、それを翻訳する工程を誰も教えてくれなかった、というのが振り返りでよく出てきます。曽我さんの社内公募の話もそうですが、機会を作っても本人が「これが成果です」と言い切れる訓練がないと、結局宙に浮いちゃうんですよね。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
うちの社内公募も、正直、機会は用意してるけど、やった後に「これはこういうスキルとして言えるよね」と一緒に振り返る場までちゃんと制度化できてないなと聞いてて思いました。良い経験をしても本人が言語化できないと、上司からしたら見えてる成果でも本人の中では自信にならないというのはあるんじゃないかと。機会を渡すのと、その成果を一緒に翻訳する手伝いをするのは、多分セットで設計しないと駄目なんですよね。今のところうちは前者止まりで、後者は現場の力量任せになっちゃってるのが課題だなと感じてます。
近藤 雅之 企業の経営層(人事担当役員)
翻訳の手伝いをセットでという話、まさにそこが肝で。うちも似たようなことをやってみて痛感したんですけど、結局それを丁寧にやるかどうかは、その上司の器用さとか熱意に依存しちゃうんですよ。表さんが言ってた、時短だと勉強会の時間帯にすらいられないという話も踏まえると、言語化を支援する場そのものを会社が制度として時間や場所ごと用意しないと、たまたま良い上司に当たった人だけが得する仕組みのままだと思います。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
聞いてて反省したことがあって。私、学生には「誠実に取り組めば信頼が積み上がる」と伝えてきたんですけど、それって良い上司に当たって、成果を言葉にして手渡してもらえる環境にいる前提だったんですよね。裁量権が大きい会社と聞くと魅力に感じる子が多いですが、その裁量を翻訳して返してくれる仕組みがあるかどうかまでは、学生も面接で聞けてないと思う。これからは企業選びの軸として、そこを掘り下げて聞くよう伝えないといけないなと思いました。
討論を終えて〜参加者の所感
金子 陽菜 成長意欲の高い若手社員(外資系コンサル勤務)
話しながらだんだん腑に落ちてきたのですが、自分が半年で手厚くフィードバックをもらえたのは、努力や運のおかげというより、コンサルの成果物が毎週見える形で出てくるからこそ上司も口出ししやすかった、という単なる役割上の偏りだったんじゃないかと思います。
備品発注や電話応対のように成果が形に残らない仕事をしている人は、本人の姿勢とは関係なく、そもそも評価する材料自体が最初から存在しません。これは声かけの偏りとはもう別次元の壁なんだなと感じました。
副業や社内公募のように外に出て試す選択肢も、結局は目立つ人にだけ機会が回るという同じ入口の話を、場所を変えて繰り返しているだけなのかもしれません。自分が「ポータブルスキル」と呼んでいたものの土台自体、意外と脆かったのかもと思わされました。
備品発注や電話応対のように成果が形に残らない仕事をしている人は、本人の姿勢とは関係なく、そもそも評価する材料自体が最初から存在しません。これは声かけの偏りとはもう別次元の壁なんだなと感じました。
副業や社内公募のように外に出て試す選択肢も、結局は目立つ人にだけ機会が回るという同じ入口の話を、場所を変えて繰り返しているだけなのかもしれません。自分が「ポータブルスキル」と呼んでいたものの土台自体、意外と脆かったのかもと思わされました。
真家 大輝 キャリアに漠然とした不安を抱える若手社員(メーカー総務職)
3年で見切りをつけかけていた自分の焦り、あれは経験の量が足りなかったからじゃなくて、そもそも声をかけてもらえる場に入れていなかっただけなんじゃないか、そう思えてきたのが一番大きいです。
備品発注とか電話応対にも、勘みたいなものはちゃんと育っているはずなんです。ただ、それを言葉にして渡してくれる人がいないから、自分でも気づけないまま埋もれていた気がするんですよね。
総務って成果物が週次で出ないから、上司も何を材料にフィードバックすればいいか分からないんだろうな、というのは同情できる部分もあります。でも、だからこそ余計に、自分から根拠を聞きに行かないといけないんだと思います。このままだと、ずっと何も渡されないまま終わってしまう気がして、ちょっと怖くなりました。
備品発注とか電話応対にも、勘みたいなものはちゃんと育っているはずなんです。ただ、それを言葉にして渡してくれる人がいないから、自分でも気づけないまま埋もれていた気がするんですよね。
総務って成果物が週次で出ないから、上司も何を材料にフィードバックすればいいか分からないんだろうな、というのは同情できる部分もあります。でも、だからこそ余計に、自分から根拠を聞きに行かないといけないんだと思います。このままだと、ずっと何も渡されないまま終わってしまう気がして、ちょっと怖くなりました。
田辺 聡子 現場の管理職・OJT担当者(IT企業課長)
目立つ案件にばかり声をかけてしまう自分の癖は、性格の問題ではなく、名簿レベルで意図的にチェックする仕組みがないと直らないと言われて、結構重く受け止めました。反省すればいいと思っていましたが、それだと私が疲れている日はまた同じ人だけ抜け落ちてしまうということですよね。
あと、裁量や機会を渡すのと、それを本人が言葉にできるように手伝うのは別の工程だという話も刺さりました。うちは完全に前者止まりで、後者を丸投げしていたなと。
次の1on1では、声かけの順番を名簿でチェックすることと、渡した仕事を本人がどう言葉にしているか聞くこと、両方を意識してみようと思います。
あと、裁量や機会を渡すのと、それを本人が言葉にできるように手伝うのは別の工程だという話も刺さりました。うちは完全に前者止まりで、後者を丸投げしていたなと。
次の1on1では、声かけの順番を名簿でチェックすることと、渡した仕事を本人がどう言葉にしているか聞くこと、両方を意識してみようと思います。
曽我 健一郎 企業の人事・採用担当者(人材開発責任者)
社内公募や短期プロジェクトで検証機会を作ればいいと思っていたんですけど、結局それも「誰を呼ぶか」という入口の時点で目立つ仕事をしている人に偏ってしまうんだなと、話を聞いていて何度も刺さりました。
育成計画シートのように記録できる仕組みを作っても、総務のように口頭でその場で消えてしまう判断や、時短勤務で情報が流れる時間帯にいない人には全然届かないというのは、正直うちの施策の穴そのものだなと感じます。
機会を用意するだけでなく、誰が最初から視界に入っていないかを名簿レベルでチェックすることや、渡した裁量を本人が言葉にできるよう手伝う工程まで込みで設計しないと、結局同じ人だけが得をする仕組みで終わってしまうんだろうなと思っています。
育成計画シートのように記録できる仕組みを作っても、総務のように口頭でその場で消えてしまう判断や、時短勤務で情報が流れる時間帯にいない人には全然届かないというのは、正直うちの施策の穴そのものだなと感じます。
機会を用意するだけでなく、誰が最初から視界に入っていないかを名簿レベルでチェックすることや、渡した裁量を本人が言葉にできるよう手伝う工程まで込みで設計しないと、結局同じ人だけが得をする仕組みで終わってしまうんだろうなと思っています。
近藤 雅之 企業の経営層(人事担当役員)
機会の偏りは、結局は誰かの善意や熱意の問題ではなくて、時間帯や成果の見え方といった設計そのものが決めているんだなというのが、一番考え直させられたところです。
うちも社内公募や1on1を制度としては整えてきたつもりでしたが、実際の運用が現場の裁量に委ねられている限り、声をかけやすい人に偏る構造は絶対直らないんですよね。
時短の方への声かけの話や、総務のように成果物が見えない仕事の話を聞いていて、機会を作ることと、その機会が誰に届くかは別の設計なんだというのを、経営側がもっと具体的に点検しないといけないと痛感しました。
制度を作って終わりではなく、誰が今月声をかけられていないかまで見える化する仕組みを、本気で考えないとダメですね。
うちも社内公募や1on1を制度としては整えてきたつもりでしたが、実際の運用が現場の裁量に委ねられている限り、声をかけやすい人に偏る構造は絶対直らないんですよね。
時短の方への声かけの話や、総務のように成果物が見えない仕事の話を聞いていて、機会を作ることと、その機会が誰に届くかは別の設計なんだというのを、経営側がもっと具体的に点検しないといけないと痛感しました。
制度を作って終わりではなく、誰が今月声をかけられていないかまで見える化する仕組みを、本気で考えないとダメですね。
石井 美咲 若手専門の転職エージェント
転職を勧めるのが仕事なのに、外に出て検証の機会をたくさん作っても不安が消えない人を何人も見てきました。正直、これでは自分の商売の前提が崩れてしまうと思いながら聞いていました。
結局みんなが欲しいのは会社を変えることではなく、「通用した」という一点の実感なのだと思います。それさえあれば、転職しないで済む人も結構いるのではないでしょうか。
あと、成果物が見えにくい仕事の人ほど声かけの入口にすら入れてもらえないという話は、面談の場でずっと感じていた違和感に名前がついたような気がしました。これは本人の努力や会社選びの問題ではなく、もっと手前にある構造の問題なんだろうと考えを改めさせられました。
結局みんなが欲しいのは会社を変えることではなく、「通用した」という一点の実感なのだと思います。それさえあれば、転職しないで済む人も結構いるのではないでしょうか。
あと、成果物が見えにくい仕事の人ほど声かけの入口にすら入れてもらえないという話は、面談の場でずっと感じていた違和感に名前がついたような気がしました。これは本人の努力や会社選びの問題ではなく、もっと手前にある構造の問題なんだろうと考えを改めさせられました。
土谷 隆 育成体力に乏しい中小企業の経営者
うちの技術が足りないんじゃなくて、言葉にして渡す一手間を、こっちがサボってきただけなんだな、って何度も突き刺されました。
溶接をやっている子と、目立つ機械を回している子とで、俺やベテランが自然と声をかける回数が違っていたなんて、今日気づかされるまで全然自覚がなかったんです。
時短だ何だっていう制度が無いから関係ないと思っていましたけど、現場が一つしかない町工場でも、隣にいるかどうかとか持ち場の違いだけで、同じ偏りが起きていたんだと思います。
辞めていった若手も、大掛かりな研修が欲しかったわけじゃなくて、一度きちんと認めてもらえた実感が欲しかっただけなのかもしれません。
それなら今すぐ、俺の声かけの癖を直すことから始められる気がしてきました。
溶接をやっている子と、目立つ機械を回している子とで、俺やベテランが自然と声をかける回数が違っていたなんて、今日気づかされるまで全然自覚がなかったんです。
時短だ何だっていう制度が無いから関係ないと思っていましたけど、現場が一つしかない町工場でも、隣にいるかどうかとか持ち場の違いだけで、同じ偏りが起きていたんだと思います。
辞めていった若手も、大掛かりな研修が欲しかったわけじゃなくて、一度きちんと認めてもらえた実感が欲しかっただけなのかもしれません。
それなら今すぐ、俺の声かけの癖を直すことから始められる気がしてきました。
岩立 和夫 終身雇用を前提にキャリアを築いた中高年社員
教え方が古いか新しいかで悩んでいたんですが、今日話しているうちに、だいぶ違う場所に落ち着いた気がします。
結局、俺がサボっていたのは、量をこなさせるとか見て覚えろとかいう手法そのものじゃなくて、誰にどの仕事を振るか、その日々の采配の癖の方だったんだろうなと。夜遅くまで残っていた人間ばかり目にかけてきた自分の育ち方も、今にして思えば、特定の人しか参加できない仕組みの上に乗っていただけで、それを誇りにしていたのはちょっと恥ずかしいですよ。
技術の深さそのものは今でも大事だと思ってますけど、それを渡す一手間を惜しんできたのはこっちの責任で、これは若い人の性急さの話じゃなかったなと痛感しました。
結局、俺がサボっていたのは、量をこなさせるとか見て覚えろとかいう手法そのものじゃなくて、誰にどの仕事を振るか、その日々の采配の癖の方だったんだろうなと。夜遅くまで残っていた人間ばかり目にかけてきた自分の育ち方も、今にして思えば、特定の人しか参加できない仕組みの上に乗っていただけで、それを誇りにしていたのはちょっと恥ずかしいですよ。
技術の深さそのものは今でも大事だと思ってますけど、それを渡す一手間を惜しんできたのはこっちの責任で、これは若い人の性急さの話じゃなかったなと痛感しました。
小野 翔太 副業・スキルシェアマッチングサービスの事業責任者
うちのプラットフォームって、案件をマッチングして評価をもらったら終わり、みたいな作りになっているところがあって、それだけでは足りないなという考えに、結構変わりました。
良い発注者に当たった人だけが「通用した」という言葉を手にできて、そうじゃない人はせっかく副業をやっても何にも意味づけできずに終わってしまう。これって結局、社内の声かけの偏りと同じ構造を、外でも再生産しているだけなんじゃないかって思うんです。
時短の人が情報の時間帯から外れているとか、目立つ仕事にしか目が向かないとか、そういう話を聞いていて、うちの発注データにも似た偏りが絶対あるだろうなと思い始めています。
だから次にやるべきは、案件を増やすことより、経験を言葉にする一手間を仕組みとして誰にでも届けられるようにすることなのかもしれないですね。
良い発注者に当たった人だけが「通用した」という言葉を手にできて、そうじゃない人はせっかく副業をやっても何にも意味づけできずに終わってしまう。これって結局、社内の声かけの偏りと同じ構造を、外でも再生産しているだけなんじゃないかって思うんです。
時短の人が情報の時間帯から外れているとか、目立つ仕事にしか目が向かないとか、そういう話を聞いていて、うちの発注データにも似た偏りが絶対あるだろうなと思い始めています。
だから次にやるべきは、案件を増やすことより、経験を言葉にする一手間を仕組みとして誰にでも届けられるようにすることなのかもしれないですね。
猪股 由美 労働政策を担当する行政官
研修費補助や制度導入支援といった、お金や仕組みの話に偏りがちだった自分の政策観が、今日でだいぶ揺さぶられた気がします。技術があるかどうかより、それを言葉にして渡すひと手間があるかどうか、しかもそのひと手間すら誰に声をかけるかで無自覚に偏っているという話が何度も出てきて、研修制度の有無を認定基準に入れるだけでは全然足りないと感じました。
特に、時短勤務の方が夕方の情報共有から物理的に外れてしまうという話は、善意で進めた働き方改革が皮肉にも機会格差を生んでいるということです。ユースエール認定の基準にも、運用する時間帯といった細部まで踏み込まないと、同じ盲点を制度側が抱え続けることになる気がしています。
特に、時短勤務の方が夕方の情報共有から物理的に外れてしまうという話は、善意で進めた働き方改革が皮肉にも機会格差を生んでいるということです。ユースエール認定の基準にも、運用する時間帯といった細部まで踏み込まないと、同じ盲点を制度側が抱え続けることになる気がしています。
富松 恵子 大学キャリアセンターの就職支援職員
誠実に取り組めば信頼が積み上がる、学生にはずっとそう言ってきたんですけど、それって良い上司に当たれるかとか、成果が見えやすい仕事に配属されるかとか、結構運の要素の上に乗っかっていた話だったのかもと思えてきました。
総務みたいに成果物が形に残らない仕事だと、誠実にやっていても声かけの対象にすら入らないことがあるという話、聞いていて胸がざわつきました。
これからは企業選びの相談で、裁量権とか成長機会っていう言葉だけじゃなくて、その裁量を言葉にして返してくれる人がちゃんといるか、時短でも夕方の場に居られなくても機会が届く設計になっているか、そこまで一緒に掘り下げて聞くようにしないといけないなと感じました。
総務みたいに成果物が形に残らない仕事だと、誠実にやっていても声かけの対象にすら入らないことがあるという話、聞いていて胸がざわつきました。
これからは企業選びの相談で、裁量権とか成長機会っていう言葉だけじゃなくて、その裁量を言葉にして返してくれる人がちゃんといるか、時短でも夕方の場に居られなくても機会が届く設計になっているか、そこまで一緒に掘り下げて聞くようにしないといけないなと感じました。
表 杏花 育児と両立しながら働く若手社員
焦っていた理由は、成長が止まっているからではなくて、誰も言葉にして返してくれないからだったのかもしれないと気づけたのは大きかったです。
ただ話を聞いているうちに、そもそも夕方の時間帯に自分がいないから声かけの対象にすら入っていないという、もう一段手前の壁があることがはっきりしてきました。
翻訳や言語化の手伝いが必要という話も、それはもう機会をもらえている人の悩みで、自分はまだその前の入口にすら立てていないんだなと、ちょっと切ない気持ちにもなりました。
でも仕組みの側で時間帯や声かけの設計を見直すという話が何人からも出てきたので、そこにはかすかに希望を持ちたいなと思います。
ただ話を聞いているうちに、そもそも夕方の時間帯に自分がいないから声かけの対象にすら入っていないという、もう一段手前の壁があることがはっきりしてきました。
翻訳や言語化の手伝いが必要という話も、それはもう機会をもらえている人の悩みで、自分はまだその前の入口にすら立てていないんだなと、ちょっと切ない気持ちにもなりました。
でも仕組みの側で時間帯や声かけの設計を見直すという話が何人からも出てきたので、そこにはかすかに希望を持ちたいなと思います。